木村元彦『オシムの言葉』

読了。八百屋で買い物するオシムと通訳の写真はちょっとワロタ。
本書はオシム本人と関係者へのインタビューに基づいて、オシムのこれまでの足跡で構成されている。オシムを知らないトーシローはここを読まれたし。ただ、そもそもトーシロー向けに書いてないという罠。

彼はサラエボ生まれである。90年W杯のユーゴ代表監督であり、ユーゴ内戦の開始時まで監督だった。ユーゴ内戦は代表チームを崩壊させ、彼はサラエボにいる奥さん娘さんと4年もの間音信不通になる。
その間、オーストリアのシュトルム・グラーツという無名クラブを率いて数々の栄光を手にするあたりは上のURLを読んでもらいたい。特に00-01年の欧州CLはすごかった。予選2回戦から本選に勝ち上がり、1次リーグはガラタサライモナコ、レンジャース相手に1位抜け。いうたら、野球後進県の無名公立高校が甲子園でベスト8、みたいなもんじゃんか。

ユーゴの歴史を我々はあまりに知らない。ハプスブルク朝あたりから遡らんといかんようである。西欧人が中国や朝鮮半島について不案内なのと同じ。サッカーは、そんな「血の出る物語」の中に立つことを見る側に強制するスポーツである。そういうことから自由だと錯覚する、無色透明エンタメ帝国主義な「米国的」脳天気さの対極。
田島ブログにかこつけて「スポーツは政治」みたいなことを書いたが、オシムだったら鼻で笑われそうだな。
「小僧、オマエに何がわかる?」

詳しくはこの本を読め。読んで、フットボールの怖さに戦慄せよ。