私の書庫は2階北側の4畳半。スチール本棚を6本入れているのだがそれでも床の上に本が溢れ、子供部屋の乱雑さを叱るときまって言い返されるのが情けない。
 言い訳をしますと、場所を入れ替えたり順番を並べ替えたりの本の整理は、本の量がある喫水線を超えた段階で不可能になる。例えば、五月雨式に買った大西巨人の本を一まとめにしようとしても、新たにスペースを作ることも、動かした後のスペースを埋めることもできなくなっている。もっと大掛かりに、文学系と社会科学系と雑学系で本棚別に分けようとしたこともあったが、鍋底をひっくり返すことの手間と労力(本は重い)を考えると気持ちが萎える。んなわけで今日此処に至る、と。言い訳になってないか。

 先日の京王百貨店古書市にて、某ブログで推薦されていた西山夘三『増補版 住み方の記』(筑摩叢書)を600円で買った。戦前〜戦後の(主に京都の)住まいの歴史が著者の個人史と絡めて綴られた一冊。収納と動線から住居の変遷を見ると、昔の日本の家が狭いながらも効率的に出来ていたんだなあと思います。振り返って我が家はどうか。西山先生(自分でも"明治男子"とはっきり書いている)のカミナリが落ちるかもしれない。
 さらには、旧制高校生以来の豊富な手書きイラスト(若いころのはほとんど漫画のイラストに近い)がすばらしい。家族も一緒に描かれた自宅や実家のイラストが、書かれた時々のコメントと一緒にたくさん出てきます。これを見るだけでもこの本を買う価値があると思うが、残念ながらイラストの中には縮小しすぎてコメントが読めないものも多い。なんとか図版を拡大したバージョンで再販されないか。

 著者は大阪生まれで元京大の先生だったため、その視線はもっぱら戦前〜戦後の旧三高・京大や左京区下鴨辺りの住居・街並みにそそがれ、私の大学時代が思い出されてなりません。思えば、家庭教師のバイトしてたのは下鴨の植物園の近くの女の子の家だった。彼女のオヤジさんは面白い人で、酒を飲みながら当時世間知らずの私に「日本で一番の土地持ちは誰か知ってるか?」とけったいな質問をして困らせられました。ちなみに答は王子製紙です(製紙会社は紙の原料確保のため森林を膨大に所有しているから)。

 懐かしいぞ京都! というわけで、来週火曜の下鴨神社古書市に合わせて、久しぶりに京都に行ってきます。