「今年の5冊」の最後の一冊にして本年の〆

ティム・パークス『狂熱のシーズン』(白水社

狂熱のシーズン―ヴェローナFCを追いかけて

狂熱のシーズン―ヴェローナFCを追いかけて

今年のアジアカップのブーイング問題では、サッカーがまたもやナショナリズム民族主義の文脈に回収された。W杯などの国際試合にからんでスタジアムでの日の丸・君が代が目立つようになって以来の現象です。それに対して、スポーツは純粋に娯楽として楽しむべきだ、というこれまたゴミみたいな反論が出てくる。どちらの議論にも苛立ちを感じる人はいるだろう。

  • 昨今のプロ野球危機を巡る言説が、おおむねこのあたりに収まってしまうのは実にアホらしい。ディズニーランドと同列に扱われて、野球ファンはなぜ怒らないんだ?

本書の効能。
「サッカーにおいてチームをサポートすること」は「もう一つのナショナリズム」であるがゆえに、政治や人道主義や市民道徳に汚染されてもなお自立することができます。この極めて強い免疫力がどこから来るのか・なぜ強いのかについて考えさせられるのがこの本。
訳者によるあと書きの中の、

グローバリズムが席巻する世界では、もはや境界は存在しない。 だからサポーター達は、いまや失われたローカルのアイデンティティを声高に主張出来る唯一の場所となったスタジアムでオブリガーデ(熱狂的なサポーター集団)という仮面をかぶり人種差別主義者のフーリガンを演じて見せる。オブリガーデのアイロニーは自分たちの行為が演技だと自覚しているところ(強調は引用者)

はうまい要約です。ただ、本書はゴール=答ではなく、考え始めるスタートラインにすぎません。私のこの文章だって全然まとまってない。
本書にいろんな意味で刺激を受けた日本のゴール裏(少なからずいると思う)がこれからどうなるのか、横から見ながらこれからも考えたいと思います。

FYI:本書に刺激された人たち(アンテナに入っているますたろうつのだま両氏は除く)
http://d.hatena.ne.jp/dozewu/20040201
http://backstand.net/book/03best.htm
http://gazfootball.com/books/verona.html
http://antenna.hogshead.jp/doa/20040110.html
http://duguilan.exblog.jp/253361