Jリーグの未来

無駄に長いので、サッカーに興味の無い向きは読まんでよし。
雑誌のWhen Saturday Comes (WSC)を読んでるとわかるが、イングランドの(あるいは欧州フットボール先進国の)フットボールビジネスは、メディアの落とす金でシャブ漬け状態。そことつるんだビッククラブと取り残された弱小クラブの2極化が進行中なのはよく知られるところ。例えば、

  • ドイツでは、スペインを真似てトップクラブのセカンドチームが下位リーグに入れるようにしたところ、2部・3部で戦っている中小クラブでは歯が立たず、経営悪化で撤退するところが出てきている。
  • 経営破たんしたリーズは、すでに2部のケツのほうだが、このまま行けば3部落ちは鉄板。チェルシーの元オーナーが連れてきた元チェルシー選手の監督の手腕にブーイングの嵐。身内で落ち目クラブをおもちゃに、という構図で見られているらしい。

このドイツの例を見ていると、従来の業界構造モデル(かっこつけて"エコシステム"と言うと張り倒します)が完全に機能不全になっているのがわかる。欧州リーグを目指して発足したJリーグだが、もはや当の欧州はJの理念に見合ったモデルとは言い難い。

ネットや雑誌で見かける「ビッククラブ待望論」(あるいはビッククラブ出現による業界進化論)は、そのあたりを視野に入れて考えているように見えないのが怖い。そもそも欧州とJでは今や「別の業界」だもの。05年で比較すると、

  • 浦和: 年商60億のうち、広告と入場料が同じくらいで合計すると6割。「集客力を元に広告を集めて稼ぐ」モデルなのは容易に分かる。
  • リバプール: 年商200億(121millionユーロ)のうち、TV放映権と欧州カップ戦収入で5割。入場料とスポンサー収入は36%しかない。つまり、「欧州でメジャーなTVコンテンツ」の位置付けで食ってるわけだ。
    • 05年はビッグイヤー取った年なんで32Mユーロも貰ってますが、その前の年は5Mユーロしか稼いでいない。欧州で勝つかどうかが売上に直結するメチャメチャvolatileなビジネスになってしまっている。よくこれで上場できたよなあ。

「欧州はビッククラブが牽引してるからJもそうなる(なりたい)」というのは、

  • 日本に欧米並みのメガメディアが誕生して、
  • サッカーを「稼げるコンテンツ」として認知してくれる

の2条件をクリアーしたら、まあそうなるかもしれん。前者については、今のところ実際に盆で賽振る連中が楽天とかライブドアで、総合電機や自動車や通信やリテールみたいに、ポケットマネーでメディアを買い叩ける図体のデカい連中は様子見モード。そりゃいずれ日本にも、タイムワーナーやニューズみたいなのが出来るとは思いますが、それまでは当分の間「集客」モデルで様子を見るしかない。欧州の構造改革の引き金を引いた「ボスマン判決」のアジア版をやって云々、みたいなことは容易に思いつくでしょうが、所詮欧州の踏み台レベル以上の規模にはならんでしょうし。

つーか、本当にこれからどうするんだろう? 欧州モデルだってまだこれから大きく変わりそうなのに、それ以外の選択肢は無いのか? 米国モデル(少数メンバーでカルテル)じゃだめなのか? JFAはそういうことを考える組織のはずだが、実はそこが一番心配だったりする・・・